ますざぶ戦国群雄伝・最終話

【最終章 終戦の先】


槍が折れた、刀も折れた、鉄砲も壊れた、体も動かない・・・そう言ったものが戦場で見られるが、珍しい事では無い。戦場の舞台であった魔来徒山は、今は静まり返っている。槍も刀も鉄砲も傷付いた体も、今は幻の様に思えてしまう・・・。


その魔来徒山は今、寺院の修復工事が行なわれている。魔来徒衆は色縞軍によって撃退されて、色縞軍が天下統一を成し遂げた。そして、天下平定の時代が再び始まる。仮初の平穏の日々かもしれないが、今は戦士達はこの平和に身を委ねる。


「俊哉殿ー!」
「全く、何処へ行かれたのやら・・・」
「見つからぬか?」
「はい・・・」
「仕方の無い奴じゃな・・・もう追わなくて良いぞ」
「・・・何故でございますか?」
「奴は自分の役目を終えた・・・だから、色縞を去った・・・そう言う事じゃろ」


色縞軍の祝勝会から僅か二日後、色縞軍が参謀の俊哉は突然行方を晦ました。彼にとってはいつも通りの事である。魔来徒衆、駐日軍、安心軍に属して居た時も、そうして来た。戦争が終われば、自由に姿を消して再び戦乱が起これば、ひょっこりと現れる。風と雲の流れるままに、放浪して働き、そして汗と涙と血を流す。それだけの事である・・・。


『さて、次は押売軍か耐用軍のどちらの末席に加えてもらおうかな・・・』
「俊哉殿」
『・・・ん?誰だ?』
「貴殿を天下統一の請負人とお見受け致す」
『それは、夏への扉殿か仙波学殿の事ではあるまいか?』
「・・・ご謙遜を。それよりも、我が押売軍に来て下さらぬか?」
「待て待て!耐用軍へと参られたい!」
「むっ・・・貴様は耐用軍の・・・!?」
「抜け駆けは許さぬぞ・・・押売軍」
「何を言うか!貴様とて同じであろう」
「ぬう・・・!」
「俊哉殿・・・あれ?」
「しまった・・・逃げられたか!?」


しばらくは、平穏の日々を過ごして武将と言う肩書きを捨てて、生きる事にするのが彼の生き方である。流離の武人、俊哉は次なる旅へと進む・・・。 (完)