ますざぶ戦国群雄伝

【第九章 魔来徒、討伐戦】


魔来徒衆・・・一向一揆を主な活動とする怪宗教の集団の様なもので、長く続く戦乱の中を生き抜いている。その集団を束ねるのは、川上栄治と言う怪僧で、絶大なカリスマを持っており、その信者を多く従えている。しかし、彼は最近では表立って活動する事は無く、陰で指揮を執っている。


一説によると「病に伏している」や「実は既に亡き者で今の川上は影武者」と言った根も葉もない噂が流れているが、川上栄治は健在である。ただ、単に職務が思った以上に忙しいので、軍を率いて戦場に出る余裕が無いのである。


・・・その魔来徒衆の総本山の魔来徒山へと、色縞の軍勢が近付いている。総力をもって挑むつもりであり、魔来徒衆も応戦の構えを見せている。


「天下分け目の合戦・・・」
「まさか、我々がここまで上り詰めるとは思ってませんでしたな」
「良いか、皆の者・・・ここまで来たならばもう何も申さぬ・・・小細工は無用じゃ」
「・・・・・・」
「総力戦で魔来徒衆を討つ・・・!」
「おおう!」
「今回は部隊を二手に分けて攻め込む。海から船団を率いて山の前後から挟撃をかける」
『連中も、我が軍が海戦を得意としてる事は百も承知してるでしょうな』
「俊哉よ、お主は安心軍に属していた時、魔来徒を浜辺で勝ちに導いたそうじゃな?」
『同じ手は通用しませぬぞ?』
「分かっておる。我々は魔来徒に勝てそうか?」
「・・・」

全員が俊哉に注目し、言葉を待つ。


『勝とうと過信すれば負ける。負けると思えば気持ちで負ける。勝敗は気にせず、気楽にやりましょう』
「え〜・・・幾ら何でもそれは・・・」
「俊哉よ、わしは勝てそうか?と聞いておる」
『殿が思うままに・・・でござる』
「・・・・・・」
「ふっ・・・では、この戦、楽しもうぞ!!」
「・・・!」
「おおう!」
『(それで良い・・・それで)』


全武将が立ち上がり、兜の緒を締める。そして、刀や槍を手にして城から出ると、まっしぐらに魔来徒山へと突き進む。


「陸路からは、仙波を筆頭として101匹北条氏康、涼風刹那、山下まさよしに任せる。海路からは夏への扉を筆頭に、小田切重兵衛、小田切ワオ、俊哉で行け。わしは、大軍を率いて陽動に出ると致す!」
「そ・・・それでは、殿の御身が!?」
『危険な戦いですが、危険は元より承知と言う事ですな・・・行きましょう!』
「はっ・・・この戦い、全力でぶつかると決めた以上は・・・!」
「・・・・・・」
「よし、此度の戦は必ず勝とうぞ!」


やがて法螺貝の音が鳴り響くと、一斉に魔来徒勢へと攻撃を開始するのであった・・・。 (つづく)