ますざぶ戦国群雄伝

【第五章 砂の虎阪城】


「次の攻略先は、安心軍の虎阪城を狙おうと思うておる」
『虎阪城ですか・・・?』
「あの城は周囲が砂地に囲まれていて、いささか攻め難い地でありますが?」
「我ら、海戦は得意ですが海じゃなくて砂浜での戦いは苦手かと思いますが・・・」


虎阪城・・・周囲を砂地に囲まれていて昼間は灼熱の地、夜間は気温が一気に降下する地に点在している。その為、攻める機会が難しいとされている。また、城内にだけは水と緑地があって、自給自足でも賄える見方によっては便利な地でもある。


『バビルの塔みたいですな』
「は?」
「敵は野戦で挑むか籠城戦にするかとなると・・・」
「やはり籠城戦でござろうな。最低でも2・3ヶ月は持ち堪える事が可能とされてる城でござるから」
「しかし、そこを抑えれば他国の侵攻に便利となりましょうな」
「・・・そう言う事じゃ」
『・・・兵力は整っておりますが、迂闊に攻めるべき城では無いかと思われます』
「拙僧も同感です」


色縞軍の怪僧・琉球みこちゃSplash☆Star(長ぇので、今後「琉球」と略)は、頷いてから地図の、ある地点を指差す。


「鯉昇城を奪い返すべきではござらぬか?」
「何?」
「・・・!」


鯉昇城とは、最初に押売軍に攻められた色縞の支城の一つである。


『・・・なるほど』
「何が、なるほどなのじゃ?」
『鯉昇城は・・・現在、押売軍と魔来徒衆が交戦中であり、更には耐用軍も虎視眈々と狙ってるとか・・・』
「左様。間隙を突くと言う事ですよ。鯉昇城の軍略的価値を他国の大名はよく理解しておられると言う事ですな・・・」
『しかし、琉球殿』
「何です?」
『多々に攻められてる城を奪い返しても、修復に時間と費用がかかるのが短所ですな?』
「ふっ・・・ははは!その通りですな。しかし、拙僧は鯉昇城も虎阪城も陥としても変わらぬ・・・と言いたいのですよ」
「・・・ふぅむ・・・」
「殿、如何なされますか?」
琉球は、鯉昇城が良いと?」
「否。しばし静観を・・・と」
『・・・なるほど。琉球殿の言わんとする事、読めたでござる』
「なんじゃと?」


俊哉は地図の虎阪城を指差して、一同の注目を集める。琉球はニヤリと微笑を浮かべる。


『昼間は暑く夜間は寒い・・・籠城戦の得意とする城。ならば、城から誘き寄せれば良い・・・と言う事ですな?』
「なるほど・・・静観すると言う事は、罠を張って・・・と言う事でござったか」
「食えない坊主じゃな・・・」
「して、どうやって誘き寄せるのじゃ?琉球
「俊哉殿を使えば良いのですよ」
『・・・え?』
「俊哉殿の前回、所属していた軍は?」
『うっ・・・安心軍でござる・・・』
「挑発なり降伏なりと、手段は任せるでござるよ・・・なぁ?俊哉殿?」
「やってもらえるな?」
『・・・はっ』


琉球は涼しげな顔で、扇子を広げて扇いでる。


「それでは、釣り野伏せの策で如何でござろうか?」
「小田切ワオの出身国の九州の勇将・島津が得意とした策じゃな」
「俊哉殿を囮にして、我らが砂に隠れる・・・と言う事ですね」
『(あれ?それ、安心軍の時に魔来徒相手にやった気がする)』
「左様であるな。では、敵を釣って貰う為に餌を豪勢にせねばなりませぬな」
「同感でござる。では、俊哉殿には大殿の鎧でも身に着けて貰うと言うのはどうであろうか?」
「名案じゃな」
『え?ちょっ・・・せめてアサルトバスター・パーツくらいで・・・』
「つべこべ言うでない。小田切衆、俊哉をデコレートしてやれ」
「ははっ!」
「それでは、出陣の準備をするぞ!連いて参れ!!」


こうして、色縞軍は安心軍の支城・虎阪城へと進軍するのであった。俊哉と言う格好の餌を引き連れて・・・。 (つづく)